ISOマネジメントの基礎
ISO14001/2015とSDGs
①SDGsの“環境”の柱としてのISO14001
- ●ISO14001は、次の事項で持続可能な開発に寄与する
- ⑴有害な環境影響を防止または緩和し、環境を保護する
- ⑵潜在的な、有害な環境上の影響を緩和する
- ⑶順守義務(法及び要求事項)を満たすことを支援する
- ⑷製品及びサービスの設計、製造、流通、消費(使用)及び廃棄の方法を管理するか、又はこの方法に影響を及ぼす
- ⑸環境に配慮した代替策(商品・サービス)を提供することで、市場における競争優位を獲得する
- ⑹有意な環境情報を、利害関係者に伝達する
~ISO14001/2015 序文より~
【参考】持続可能な開発目標(SDGs)の概要
②公害問題から環境リスクの管理そして環境経営へ
- ●足尾鉱毒事件以来、汚染の発生源を「公害」として特定し、規制をかける手法は、1967年公害対策基本法、1970年同法改正、さらに1993年環境基本法へと発展してきた
- ●一方「経済的手法」では、地球温暖化対策税が石油・天然ガス・石炭の利用に課税(CO2排出量1t当り289円)されるかたちで導入されている
- ●1989年の国際商業会議所による「環境監査に関する声明」では地球環境問題から生ずる予測可能なコスト(規制当局=政府の肥大化による税負担の増大)を取り除くための手法として、環境監査を含む環境マネジメントシステムの導入が提唱された
- ●1980年代の「環境経営」はコストとリスク管理に重点があった
③環境マネジメントシステムの目的と成功の要因
- ●環境マネジメントシステムの成功は、トップマネジメントが主導する、組織のすべての階層からのコミットメント(強い意志による関与)にかかっている
- ●組織は、有害な環境影響を防止又は緩和し、有益な環境影響を増大させるような機会、中でも戦略及び競争力に関する機会を活かすことができる
- ●トップマネジメントは、他の事業上の優先順位と整合させながら、環境マネジメントを組織の事業プロセス及び、戦略的な方向性と意思決定に統合することができる
- ●トップマネジメントは、環境上のガバナンスを組織の全体的なマネジメントシステムに組み込むことで、リスク及び機会に効果的に取り組むことができる
~ISO14001/2015規格・序文より~
④なぜ、初期環境調査から始め常にそこに還るのか?
- ●環境マネジメントは、三つの領域を考慮しなければならない。即ち、ローカル・リージョナル・グローバル(サイト・ローカル・グローバル)である~また、現実的・感覚的問題もある
- ●まず、利害関係者の「ニーズ及び期待」即ち組織に加えられている要求や圧力について自問することが肝要である
- ⑴法的事項
- □過去の環境負債はないか?
- □規制順守状況は確認されているか?
- □将来の法規制動向は把握されているか?
- □行動規範は定められているか?
- □環境に関して取締役の責任は決められているか?
- ⑵リスクマネジメント
- □何があなたやあなたの組織のリスクか分析されているか
- □事業所内のリスクにはどのようなものがあるか
- □事業所外に与えるリスクは何か
- □移動サイトでのリスクは認識されているか
- □事故・事件への対処管理はできているか
- ⑶顧客
- □顧客マネジメントはどのように行われているか
- □環境に配慮した、製品やサービスはあるか
- ⑷財務
- □環境損害保険に加入しているか
- □銀行は潜在的な環境負債を見ようとしているか
- ⑸競合上の優位点
- □現在および将来の製品あるいはサービスには、潜在的な
- □市場戦略の一環として、環境面の考慮がされているか?
- ⑹供給者
- □主要な供給者は、環境面でどのようなマネジをしているか
- ⑺情報
- □地域社会その他の利害関係者と効果的に情報交換ができているか
- ⑻将来
- □あなたやあなたの組織は、以上のような点を満たす戦略的問題をどのように認識しているか
- ⑴法的事項
▪環境マネジメントの基本構成
- ●直接影響 間接影響
- ●現在・過去・未来の問題点
- ●現実的問題 感覚的問題
- ●サイト・ローカル・グローバル
- ●通常・非通常・緊急状態
▪環境影響(Environmental impact)
有害か有益かを問わず、全体的に又は部分的に組織の環境側面から生じる、環境に対する変化
▪汚染の予防(Prevention of pollution)
有害な環境影響を低減するために、様々な種類の汚染物質又は廃棄物の発生、排出又は放出を回避、低減又は管理するためのプロセス、操作、技法、材料、製品、サービス又はエネルギーを(個別に又は組み合わせて)用いること
▪著しい(Significant=有意な)環境影響の基準
- ⓐその活動は法規制を受けているか?
- ⓑその活動は組織の特性的なものではないか?
- ⓒその活動は過去に苦情や事故はなかったか?
- ⓓ組織原則や上位方針にある環境影響を持っていないか?
- ⓔ大量の資源・エネルギーを使っていないか?
- ⓕ廃棄物削減、資源リサイクル促進の余地はないか?
- ⓖその活動の結果は完全な情報はあるか?
- ⓗ環境汚染が生じた場合、修復するのに時間はかからないか?
- ◦リスク(発生の可能性×結果の重大性)は大きくないか?
- ➡すべてがnoであれば、おそらく重大ではないだろう
▪環境影響評価から、方針・目標・計画・手順のフロー図
⑤ISO14001/2015 規格要求事項の全体像
⑥いまいちど、第三者認証とはなにか?
- ●組織の利害関係者がクライアントである、第三者認証についての誤解が、ISOマネジメントの質を低下させている
- ●日本で出回っている、ISO規格の認証ノウハウ本には、第三者認証について、認証機関についての明らかに誤った記述がある
- ●監査の基本構造は、クライアント(依頼者)・監査対象組織・オーディター(監査人)によって成り立っている
- ●第一者監査のクライアントは、トップマネジメントであり、当該組織を対象に、監査員が監査を行う(いわゆる内部監査)
監査(audit)の基本構造
監査の種類 | クライアント | 監査人 | ドナー |
第一者監査 | トップマネジメント | 内部監査員 | 組織 |
第二者監査 | 顧客など利害関係者 | 監査員 | 組織 |
第三者監査 | 利害関係者 | 第三者監査機関 (認証機関) |
組織 |